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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第30章 歪な音色(前編)<参>


(仕方ない。こいつをさっさと始末して善逸の方へ行くわよ!!)

汐は刀を抜き、口の鬼へ向けた。紺青色の刀身が、淡い青い色へと変わる。その変化に鬼の目が少し驚いたように動いたが、次の瞬間には腹の口が伸びて汐に襲い掛かってきた。

それを間一髪よけると、口は壁にぶつかったが、その壁の一部をかみちぎりながら本体へと戻っていく。戻った後の壁には、くっきりと食べられたような跡が残っていた。そして再び、口はゴムの様に伸びて汐に襲い掛かってくる。

攻撃をよけつつ、汐は鬼の頸を狙う。本体はほとんど動かず、伸びる口だけが武器のようだ。だが、もしかしたら血鬼術を使う可能性もあるため油断はできない。

自分に向かってきた口を刀で払いつつ、汐は鬼へ少しずつ近づいていく。このまま近づき、飛飛沫で一気に蹴りをつけるつもりだった。

が、その瞬間。遠くで善逸の凄まじい悲鳴が聞こえた。彼はともかく一緒にいた正一の方が心配だ。一刻の猶予もない。

ふと、汐の足元に何かが転がってきた。それは汐の顔程の大きさの水瓶で、先ほどの攻撃で空いた穴から転がりだしてきたものだった。

汐はそれを拾い上げると、向かってきた口に無理やりねじ込んだ。

水瓶は直ぐにかみ砕かれるが、動きが一瞬止まる。その隙に汐は刀を振り上げ、口と本体のつながりを断ち切った。
血の飛沫が上がり、鬼の体が震えだす。彼女は瞬時に間合いを詰めると大きく息を吸った。

――海の呼吸
壱ノ型・潮飛沫(しおしぶき)!!

そのまま目にもとまらぬ速さで頸を薙ぐと、離れていた口から断末魔の声が漏れる。崩れゆく鬼の体に向かって汐は吐き捨てるように言った。

「あんたらのせいでこっちは苛々が頂点に達しそうなのよ」
それだけを言うと、汐は二人を追って先へと向かった。
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