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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第30章 歪な音色(前編)<参>


「でもな、でもな!?あんまり喋ったりとかしてると、鬼とかにホラ、見つかるかもだろ!?だから極力静かにした方がいいって思うの俺は!!」
「あんたその言葉、そっくりそのまま打ち返すわよ!!今一番騒いでんのはあ・ん・た・な・の!!わかる!?」
「いえ、汐さんも善逸さんに負けずとも劣らずに騒がしいです・・・」
二人の大声に、正一はおずおずと、しかし鋭く突っ込みを入れる。その言葉に汐は頬をわずかに染めた後咳ばらいを一つした。
その時だった。

「っ!!」
身体にまとわりつくような気配を感じ、汐は目を細めた。鬼の気配がする。すぐさま彼女は刀に手をかけ、善逸に正一を守るように命じた。
だが、それよりも早く正一の顔が青ざめる。善逸がゆっくりと振り返るとそこには――

軒下から舌をだした、四つ目の鬼がこちらをなめるように見つめていた。

「ぐひ、ぐひ、子供だ。舌触りがよさそうだ・・・」

それを見た瞬間、善逸の髪の毛が思い切り逆立ち、目玉はこれ以上ない程飛び出させながら叫んだ。

「ほら御覧!!出たじゃないでたじゃない!!汐ちゃん助けてえええ!!!」
「あんたも鬼殺隊でしょうが!!大丈夫よ!!あんたならできる!!」
「いや無理だって!!無理だってええ!!!」

善逸は完全に混乱して、泣きわめきながら頭を振る。とても戦える状態ではない。

仕方なく汐は二人の前に立とうと一歩踏み出す。だがその瞬間。
暗闇から何かが飛んできて、汐の眼前を通り抜けた。
その方向を向くと、暗がりの中からもう一体の鬼が姿を現した。人のような姿をしているが単眼で腹に口のようなものがある。

(こっちにも鬼が・・・。気配が混ざり合ってわからなかったっ!!)
まさかの新手の出現に、善逸のほうへの援護ができない。汐はやむを得ず善逸達に向かって叫んだ。

「善逸!!正一を連れて逃げ――」
だが、汐が言い終わる前に、善逸の悲鳴が響いた。
「ア゛ーーーーーッ(汚い高音)!!!来ないでェ!来ないでくれえ!!やめてえーーーッ!!!」

そのまま彼は正一を引っ張って逃げ出す。それを追う舌の長い鬼。汐はそいつを逃がさまいと追いかけるが、口の鬼に阻まれてしまった。
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