第28章 歪な音色(前編)<壱>
「・・・なあ炭治郎、汐ちゃん」
善逸に名を呼ばれた二人が振り返ると、彼は青ざめた顔のまま家を見つめている。
「この音何なんだ?気持ち悪い音・・・。ずっと聞こえる・・・。鼓か?これ」
「音?」
「さっきから何を言っているの?何も聞こえ・・・」
震える声でそう告げる善逸に、怪訝そうな顔をする汐と炭治郎。だが、汐が言葉を紡ごうとした瞬間。
家の中からポン、ポン・・・と音が聞こえた。それは善逸の言う通り、鼓の音のようだ。
音は段々と大きくなり、そして打ち鳴らす速度も速くなっていく。まるで、段々とこちらに近づいているように。
善逸と子供の顔に脅えが走り、汐と炭治郎の顔に緊張が走る。やがて音がこれ以上ない程速く大きくなった瞬間。
家の窓から、赤黒い何かが飛び出してきた。