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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第28章 歪な音色(前編)<壱>


「炭治郎。やっぱり殴り飛ばしたほうがよかったんじゃない?」
「それでもよかったんじゃないかと思い始めた自分がなんだかいやだ」

今なお立ち去った女性に未練がましく縋りつこうとする少年に、炭治郎は可哀そうなものを見るような表情で見つめた。

「何だよその顔!?やめろおお!!なんでそんな別の生き物を見るような眼で俺を見てんだ!?お前!責任とれよ!お前のせいで結婚できなかったんだからあああ!!!」

少年は炭治郎を指さし、大声で叫ぶ。炭治郎はそばに来ていた汐と顔を見合わせると、寸分の狂いもなく同時に塵を見るような蔑み切った眼で彼を見下ろした。

「お前ら打ち合わせでもしたのか!!!」

少年は高らかに突っ込むと、涙を溢れさせながら二人を見据えながら言った。

「いいか!俺はもうすぐ死ぬ。次の任務でだ。俺はものすごく弱いんだぜ!なめるなよ!!」
「いや別に舐めてないし威張れることじゃないし」
「俺が結婚できるまで、お前らは俺を守れよな!!」
「なんでそうなるの!?あんたの脳みそ藻屑でも詰まってるの!?」

少年の支離滅裂な言い分に汐が思わず突っ込んでいると、その場の空気を読めていないのか炭治郎が口を開いた。

「俺は竈門炭治郎でこっちが大海原汐だ!」
「何唐突に名前なんて名乗ってんの!?しかもなんでさらっとあたしまで紹介してんの!?あんたの頭も茹で上がった!?」

炭治郎のとぼけた発言に、汐の声も思わず上ずる。そんな炭治郎に少年は「ごめんなさいね!」と叫ぶように謝った。

「俺は我妻善逸だよ~!助けてくれよ二人とも~!」
善逸と名乗った少年は、今度は炭治郎の足元に縋りつく。あまりのみっともなさに、汐は段々腹が立ってきた。

「助けてくれってなんだ?善逸はなんで剣士になったんだ?なんでそんなに恥をさらすんだ?」
「言い方酷いだろ!」
「いや酷いも何も的確でしょ。っていうか、なんであたしがいちいち突っ込んでんの?」

だんだん自分の存在意義が分からなくなってきた汐をしり目に、善逸は再び泣き喚きながら言った。
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