第27章 襲撃<肆>
浅草を離れ、二人はあぜ道を歩く。そんな彼らの頭上には、二羽の鎹鴉が飛び回り次の行き先を告げる。
「南南東~!次ノ場所ハァ、南南東ォ南南東ォ!!」
「南南東デスヨォ~。次ハ南南東デスゥ~」
喧しく叫ぶのは、炭治郎の鎹鴉の天王寺松右衛門。気の抜けるようにしゃべるのは、汐の鎹鴉のソラノタユウだ。
思った以上に喧しい鴉に、汐は顔をしかめて空を見上げる。
「あーもう!うるさいわね!わかってるわよ!いちいち怒鳴りつけないで」
「汐も少し落ち着け。気持ちはわかるが落ち着け、頼むから」
鴉に怒鳴りつける汐とそれを制止する炭治郎。だが、そんな二人よりもさらに喧しい声が前方から飛んできた。
「頼むよおおおおお!!!」
二人の声をかき消さんばかりの大声に、流石の汐と松右衛門も言葉を失いその方角を見る。
そこには
「頼む頼む頼む!!!結婚してくれええええ!!!いつ死ぬかわからないんだ俺は!!だから結婚してほしいというわけで、頼む、頼むよおおおお!!!」
一人の女性に縋りついて泣きわめく、全身黄色の少年の後ろ姿だった。