• テキストサイズ

【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第3章 嵐の前の静けさ<弐>


無事に稽古が成功した汐は、ようやく夕餉にありつけた。だが、それをつまんでいた時、玄海はふと思いつめたように口を開いた。

「なあ、汐。人間ってのはいつまで生きられるかわからねえ。ついさっきまで元気だったやつも、次の日にはポックリ逝っちまうことだってある」
「どうしたの?急にそんなこと言い出すなんて」
まるで遺言のようなその言葉に、汐は左手に持っていた箸を止めた。
「俺だってもう年だ。いつまでもお前の面倒を見ていられるわけじゃねえ。もし、もしもだ。俺に何かあったときは『鱗滝左近次』という男を訪ねろ」
「うろこ、だき・・・?」
聞いたことのない名前に、汐は怪訝そうに首をかしげた。

「俺の昔の、知り合いだ。いつも天狗の面をつけた偏屈野郎だが、決して悪い奴じゃねえ。必ず、お前を助けてくれるだろう。だから・・・」
「やめてよ!食事中にそんな話するの。それに、そんな事言われたって困る。だってやっと薬が手に入るってときに、そんな死ぬみたいなこと言われたら・・・」

そう叫んで汐は玄海から目をそらす。その目が冗談を言っているものではないとわかってしまうからだ。
しかし玄海は汐の言葉に首を横に振った。

「汐。生きるってことは覚悟と選択の連続だ。もしも、万が一って言葉は決して『ありえない』ってことじゃねえ。それだけは忘れるな」

その言葉を最後に、二人の食卓は気まずいもののまま終わってしまった。
玄海の言葉が胸に引っかかったまま、汐は翌日を迎えてしまうのであった。
/ 1491ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp