• テキストサイズ

【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第27章 襲撃<肆>


「・・・笑ってた。おやっさん、最期の瞬間笑ってた。あたしのこと恨んでいてもおかしくないのに。そんな感情、眼には一切なかった」

汐が震える声で答えると、愈史郎は視線を少し緩めて言葉を紡いだ。

「あいつが鬼となったきっかけは、お前の言葉だったかもしれん。だが少なくとも、お前が思っているようなことを、あいつが思っていたとは俺は思えん。まあ、人間の心の中など、鬼である俺にはわかるはずがないがな」

それだけを言うと、愈史郎はすっと立ち上がり珠世の元へ戻っていった。
一人になった汐は、そっと目を閉じた。脳裏に浮かぶ、大好きな養父の笑顔。厳しくも優しい、彼の姿。

(あの時、別嬪な姉ちゃん以外から施しは受けないって言ってたけど、本当だったのね。確かに、珠世さんは美人だわ・・・)

汐の目から涙が一筋流れ、頬を濡らす。そしてさっきの無残な光景を思い出し、心にある思いが浮かぶ。

(あたしのせいでおやっさんは鬼になった。そして彼を斬った。それは変わることがない事実。きっと一生この業を背負っていくだろう。けれど、だからこそ。あたしみたいな思いをする人を、これ以上増やしてはいけない)

汐は涙を拭き、目を開いた。そこにはゆるぎない決意が宿っている。そして、大切な仲間である炭治郎と禰豆子を、絶対に悲しませてはいけない。
そう心に誓ったのであった。
/ 1491ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp