第27章 襲撃<肆>
その後、負傷した二人は珠世の手当てを受けるため処置室へとやってきた。特に炭治郎は骨折しているためか、少し手当てが長引いた。
手当てを終えた汐は一人、部屋の隅でぼんやりとしている。先ほどの出来事が、まるで夢のようだった。
だが、肩の痛みは本物だし、先ほど握りしめたときにできた傷も本物で現実である確かな証拠だった。
そんな彼女の背後から近づいてくる者がいた。汐が気配を感じて振り返ると、そこには顔をしかめながら湯飲みを持つ愈史郎の姿があった。
「なんだ、愈史郎さんか」
「なんだとはなんだ小娘。痛み止めの飲み薬を持ってきたんだ。本当はお前なんかどうでもいいが、珠世様が様子を見に行けというから仕方なく来ただけだ」
「あんたに小娘呼ばわりされたくないんだけど」
「小娘を小娘と言って何が悪い。俺は35歳だからお前よりもずっと年上だ」
愈史郎がふんぞり返りながらそういうと、汐は思い切り顔をひきつらせながら目を瞬かせた。
愈史郎は見た目と年齢差に驚いたのだろうと思ったが、実際には35歳の言動行動とは思えない程の幼稚さに驚いただけだった。(ということは口が裂けても言えなかった)
「珠世様が調合してくださった薬だ。ありがたく!飲むがいい」
ありがたく、の部分を強調する愈史郎に少し呆れならも、汐は薬を受け取り飲んだ。が、あまりのまずさに思わず顔をしかめる。そんな汐を、愈史郎は少し意地悪そうな顔をしてみていた。