第26章 襲撃<参>
「ありがとう、汐」
「え?な、なに?」
「俺、いつも汐に助けてもらってばかりだ。さっきも、汐が作戦を考えてくれなければ危なかったかもしれない。最終選別の時も、さっきのあの人の時も、そして今も。汐がいなければ俺はここに生きていることはできなかったかもしれない。だから、悪いほうに考えないでくれ」
心の中を見透かされ、汐は言葉を詰まらせる。どうしてこの人はいつも、自分が欲しい言葉をくれるのだろう。
汐は目頭が熱くなりながらも顔をそらし、そっと言葉を紡いだ。
「・・・何言ってんの。あんたさえよければ、いつだって何度だって支えてあげるわよ」
「汐・・・」
「って、変な風にとらえないでよ!あたしはただ、自分よりも人を優先するあんたが心配なだけ。勘違いしないでよねっ!」
頬を僅かに染めながら、汐はそう言ってつっけんどんな態度をとるが、彼女が怒っていないことは匂いで察知した炭治郎は思わず笑みを浮かべた。
その時だった。
「あれ?なんだ?この香り」
「え?あたしには何も匂わないけど・・・」
「この香りは確か・・・珠世さんの術と同じ・・・」
炭治郎がつぶやいた瞬間、遠くから怒声が聞こえてきた。