第26章 襲撃<参>
(か、体が重くて力が入らない・・・!)
先程の衝撃で傷口が開いたのか、右肩が燃えるように熱い。袖の中を液体が流れる感覚がした。
だがそれよりも気になるのが炭治郎だ。先ほどかなりの技を放っていたし、いくつか相殺しきれずぶつかっていたようにも見えた。
(動け、動け!炭治郎を捜すのよ!!)
汐は呼吸を整えると、よろよろと立ち上がる。幸い、骨折はしていないように思える。あたりを見回すと、少し先でせき込んでいる炭治郎の背中が目に入った。
「炭治郎!炭治郎、無事!?生きてる!?」
汐はすぐさま駆け寄り彼を見る。かなり息は乱れてはいるものの、生きていることに安堵する。
「汐・・・無事だったのか・・・。よかった」
相も変わらず自分よりも他人を心配する炭治郎に、汐は思い切り怒鳴りつける。
「人の事よりも自分の心配をしなさいよ!」
そしてゆっくりと炭治郎を起こす。容体を聞くと、足と肋骨が折れたかもしれないと告げた。
「早く、禰豆子たちを助けに行かないと・・・」
だが、骨が折れた激痛のせいか疲労のせいか、将又両方か。炭治郎は立ち上がることはおろか、刀すら握れないようだった。
汐は炭治郎の刀を拾うと、鞘へと戻す。それから彼の右側に回ると怪我をしていない腕で肩を支えた。
「ほら、しっかり。行くんでしょ?」
汐は震える足で必死で炭治郎を支える。彼女自身も決して軽くないケガをしているのは明白で、無理をしているのは明らかだった。
「だめだ汐。お前だって怪我をしてるだろ!俺のことはいいから早くみんなのところへ」
「うるさい、黙れバカ。怪我をしているのはお互い様よ。それに、今のあたしにはこんなことしかできないから」
炭治郎を抱えながら、汐は自分の弱さに怒りを感じていた。あれだけ大口をたたいておきながら、どちらの鬼も倒すことができなかった自分への怒りだ。
それを匂いで感じ取った炭治郎は、そっと彼女の手に触れる。
びくりと汐の体が大きくはねた。