第26章 襲撃<参>
「おのれ!おのれ!おのれ!!お前たちの頸さえ持ち帰ればあの御方に認めていただけたのに!!許さぬ!許さぬ!許さぬ!!」
既に頸は灰になって崩れつつあるのに、矢琶羽の口からは呪詛の言葉が飛び交う。そのしぶとさに汐は思わず顔をしかめた。
「汚い土に儂の顔を付けおってええええ!!!お前達も道連れじゃああああ!!!」
残っていた矢琶羽の体の手の目が、二人に向かって閉じられる。その瞬間。二人の体に矢印が撃ち込まれた。
しかも一本や二本どころではない。何本もの矢印があらゆる方向に向いている。
(しまった!これは・・・相打ちに持ち込む気だ!!)
気づいたときには遅く、二人の体はそれぞれの方向に吹き飛ばされた。しかも先ほどの比ではない程の強い力だ。汐の背後には、石壁が迫っている。受け身をとる程度ではとても対処できそうにない。
――壱ノ型 潮飛沫(しおしぶき)!!
足に力を込めるこの型を使い、体を回転させた後壁を踏むようにして必死に耐える。ミシミシと筋肉が悲鳴を上げ、激痛が走る。
そして間髪入れずに今度は上空へと打ち上げられる。急速に打ち上げられて体に圧がかかる。しかし、こんなものは水圧に比べれば大したことはない。
圧に耐え切った汐を、今度は地面へと落とされる。
――肆ノ型・改 勇魚(いさな)下り!!
地面を穿ち衝撃を和らげる汐。炭治郎も同じように次々に技を放って衝撃を和らげていた。
全身がバラバラになりそうな衝撃と痛みに必死で耐える中、汐の目が崩れつつも呪いの言葉を吐き続ける矢琶羽の頸を捕らえる。それを見た瞬間、汐は切れた。ぷっつりと切れた。
「いい加減しつこいんだよクソが!!さっさとくたばれ!!」
怒声を上げながら汐は渾身の力を込めて矢琶羽の頸に向かって刀を投げつけた。刀は綺麗な軌跡と共に頸に突き刺さる。
それが決定打になったのか、頸は瞬く間に灰となり消えていった。
それと同時に、矢印が一斉に消滅する。二人はそのまま離れた場所に落ちた。
その瞬間、額に張り付いていた愈史郎の術の札がはがれて消えた。