第26章 襲撃<参>
(紅潔の矢と同じ方向に回転しながら攻撃をよけたか。猿共め)
何とか回避できたものの、二人の体力は限界に近い。特に汐はついさっきまで朱紗丸と戦っていたためその体力の消費量は炭治郎の比ではない。
このまま攻撃されることは、非常にまずい。早く、隙を作らねば。
「そろそろ死ね!!」
二人のしぶとさにしびれを切らした矢琶羽が矢印をいくつも放つ。汐に向かって放たれた矢が、彼女を穿とうとしたその瞬間だった。
――伍ノ型 水泡包(すいほうづつみ)!!
汐の姿がその場から消える。突然のことに矢琶羽は一瞬だが狼狽える。だがその一瞬の隙を汐は見逃さなかった。
矢印の間を縫い、間合いに入る。だが、彼女の目的は頸を狙うのではない。現に一瞬の目くらましはすでに相手にはバレている。
汐の足元に大きな矢印が現れ、彼女の体を後方へ押しやろうとする。しかしその一瞬の間に、汐は技を放った。
――肆ノ型 勇魚(いさな)昇り!!
汐の強烈な斬撃が地面をえぐり、土柱を上げる。土ぼこりが矢琶羽にかかり、彼は悲鳴を上げた。
「炭治郎、今だ!!」
汐が叫ぶと同時に炭治郎が参ノ型を使い距離を詰め、陸ノ型で矢印を巻き取る。矢印がほぼすべて、彼の刀に巻き取られていく。
凄まじい重さに炭治郎の腕が悲鳴を上げる。だが、突如少しだけ腕が軽くなった。いつの間にか汐がそばにいて、彼の刀を支えている。
「「ぐううううう!!!」」
二つの声が重なり、巨大な渦が矢琶羽に引き寄せられるように向かっていく。
「汐、離れろ!!」炭治郎が叫ぶと同時に汐が離れ、そしてそのままの勢いで炭治郎が刀を振り下ろす。
――弐ノ型・改 横水車!!
その一撃が矢琶羽を穿つ。血飛沫と共にうめき声をあげながら、矢琶羽の頸が宙に舞った。
そのまま炭治郎の体も地面に叩きつけられる。その様子を、汐は少し離れたところから見ていた。
(や、やった!)
思わず心の中で拳を握る汐。ついに鬼を倒すことができたのだ。
矢琶羽の頸が地面に落ちた後ごろりと転がる。右目が飛び出したままという異様な姿になりながらも、彼は口を開いた。