第25章 襲撃<弐>
だが、汐の体が砕け散ることはなかった。毬が汐に当たる寸前に禰豆子が割って入り、毬を蹴飛ばしたのだ。
「禰豆子!?」
思わぬ闖入者に、汐の声が上ずる。怪我は大丈夫なのかと、聞く前に禰豆子は汐を庇うように前に立った。
そして振り向くと、汐に視線を送る。その眼は、(ここは自分にまかせて)と言っているようだった。
その眼を見て汐は自嘲気味に笑う。要するに自分は足手纏いだから、この場を離れろということだろうか。
「・・・情けないわね。女に二言はないとか大口叩いておいてこの様だなんて」
汐がそういうと、禰豆子は少し顔をしかめると、別な方向へ視線を向けた。そちらは、炭治郎と矢琶羽が戦っている方角だ。
「炭治郎を助けてほしいってこと?」
汐が聞き返すと、禰豆子は表情を緩めてうなずいた。
汐はうなずき返すと、禰豆子の肩に手を当てる。
「わかった。あんたを信じるわ、禰豆子。そして必ず、あんたの兄さんを守って見せるわ」
汐がそういうと、禰豆子はそのまま朱紗丸へと向き合った。
「汐さん!傷の手当てをしますからこちらへ」
建物の中で珠世の声がする。汐は後ろ髪をひかれるような思いで、戦場から離脱した。