第25章 襲撃<弐>
「キャハハハ!楽しいのう。楽しいのう。蹴鞠もよい。矢琶羽、頸を五つ持ち帰ればよいかの?」
「違う、三つじゃ。鬼狩りと青髪と逃れ者。残りの二人はいらぬ」
矢琶羽の言葉に、対峙していた炭治郎は唇をかむ。一方汐は、そんな言葉などどうでもいいというように低くつぶやいた。
「あんた・・・あたしの友達に何してくれてんのよ」
うつむいていた汐が顔を上げる。人間とは思えぬほどの殺意の宿ったその表情に、朱紗丸の表情が強張った。
だが、いくら殺意を宿しても肉体が変化するわけでもない。朱紗丸は再び6本の腕に毬を出現させると、汐に向かって投げつけた。
だが、
「しゃらくせえ!!!!」
汐の口から恐ろしい程の怒号が飛ぶと同時に、彼女に向かっていたはずの毬が弾かれる。そのあり得ない現象に朱紗丸は勿論愈史郎ですら驚愕した。
そしてその勢いで汐は刀を構えて躍りかかる。
「矢琶羽!」
朱紗丸が叫ぶと同時に、再び汐に向かって矢印が撃ち込まれようとしていた。だが、汐は寸前でそれをかわし、睨みつける。
(くそっ、くそっ!!あいつに近づこうとすると矢印の奴が邪魔をする。あいつ、炭治郎と戦っているくせにこっちまで気を回せるの!?)
その苛立ちが呼吸を乱し、体勢が崩れた瞬間。汐の真横を毬がかすった。かろうじてかわしたものの、汐の右肩から鮮血が噴き出した。
「ぐっ!!」
鋭い痛みを感じ、肩を抑えて蹲る汐。そんな彼女を朱紗丸は毬をつきながら睨みつける。
「喧しい声を出しおって。だが、これで終わりじゃ。その頸、貰い受けるぞ!!」
朱紗丸は腕をこれ以上ないくらい盛り上がらせ、体を思い切り引く。そして最大の力を込めて、その毬を汐にはなった。
耳をふさぎたくなるような轟音が、風を切って汐に迫る。何とか身をかわそうとするが、痛みが走り体が強張る。