第25章 襲撃<弐>
一方。炭治郎は矢琶羽に苦戦を強いられていた。一太刀を浴びせようとすれば矢印の力で太刀筋を変えられてしまい、攻撃することができない。
そして何よりも、手の目玉が気持ち悪い。申し訳ないけれど、気持ち悪い。
矢琶羽は笑いながら再び矢印を炭治郎に向けて放つ。放たれた無数の矢は、時間差で炭治郎ととらえようと飛んでくる。
矢印は彼の体に当たるまで消えないし、斬ることもできない。刃がふれた瞬間、矢印の方向へ飛ばされてしまう。
どうする?どうする?炭治郎が焦りを見せた、その時だった。
「矢琶羽!!」
朱紗丸の声が響き、矢琶羽が目玉を呼ばれた方向に向けたその時だった。
呼ばれた方向には彼女はおらず、そこにいたのは死角から刀を構えた汐の姿。
「炭治郎!」
汐が叫ぶと同時に炭治郎が走り出し、汐も刃を突き立てようとする。だが、
「その程度の小細工が、儂に通用するとでも思ったか」
矢琶羽は両手を汐と炭治郎の方向へ向け、目玉を閉じた。
それと同時に、二人の体が別方向へ飛んでいく。汐の体は空中に打ち上げられた後、急速に落ちていく。
――肆ノ型・改 勇魚(いさな)下り!!
技を出して衝撃を緩和した汐は、すぐに炭治郎の下に駆け寄る。炭治郎も壁に叩きつけられる寸前に打ち潮で衝撃を緩和したのだ。
汐の姿を見て炭治郎は驚いた顔をしたが、汐はそのまま彼の隣に立ち刀を構えた。