第25章 襲撃<弐>
汐は刀を構えながら朱紗丸と対峙する。彼女は相も変わらず笑い声をあげながら、六本の腕に毬を装填させる。
「キャハハハ!さあ、人間ごときの体でいつまでもつかのう!」
朱紗丸は笑いながら大きく振りかぶると、汐に向かって毬を投げつけた。矢印の力がないせいか、軌道は単調だ。
だが、その筋力から繰り出される投げは、大砲のごとき破壊力を持つ。現によけた汐の背後の木が、毬が当たっただけで真っ二つに折れたくらいだ。
あれが人間の肉体だったら、折れる何処ではない。ひき肉になってしまう。その事実に、汐の顔から汗が流れる。
「キャハハハ!どうしたどうした!?お前の威勢とやらはそんなものかえ?」
朱紗丸は嘲笑うかのように次々と毬を投げてくる。隙をつこうにも、毬は後から後から生み出され、近づくことすらできない。
(さっさとこいつを仕留めて、炭治郎たちを助けなくちゃいけないのに!)
攻めきれないもどかしさと朱紗丸の挑発的な態度に、汐の苛立ちは増すばかりであった。しかも常に動いている自分とは違い、朱紗丸はほとんど動かないまま毬を投げ続けているため体力の消費量も全く違う。
だが、そんな彼女の努力(?)の甲斐もあってか、朱紗丸は背後から迫る愈史郎に気づくことができなかった。
彼女が気づいたときには、愈史郎は姿を消したまま近づき、その体に数発の体術を叩き込んだ。思わぬ援軍に、流石の朱紗丸の顔が強張る。
「珠世様を傷つけたこと、絶対に許さん!!」
愈史郎が朱紗丸を止めてくれたおかげで、汐に攻撃の隙ができた。
全集中・海の呼吸――
――伍ノ型 水泡包(すいほうづつみ)!
相手の盲点へ入る技を使い、汐はすぐさま距離を詰め頸を狙う。しかしその刃は届かなかった。
汐の攻撃に気づいた矢琶羽が、汐に矢印を打ち込んだのだ。