第24章 襲撃<壱>
だが、動きを止めたはずの毬が震え、二人にぶつかった後にまるで生き物のように刀を離れていく。
愈史郎に当たった時も不自然な曲がり方をしていた。特別な回り方をしている様子もない。
ならば、考えられることは一つだ。この鬼のほかに、何かをしている奴がいる。
「愈史郎。愈史郎」
部屋の隅では頭部を失った愈史郎に、珠世が呼びかける。すると、破壊された部分が動き出し、メキメキと音を立てながら骨や筋肉を作っていく。
そのあまりの異様さに、汐と炭治郎は思わず悲鳴を上げた。愈史郎は再生しながらも、珠世に声を荒げた。
「珠世様!!俺は言いましたよね?鬼狩りにかかわるのはやめましょうと最初から。俺の目隠しの術も完ぺきではないんです。それは貴女もわかっていますよね?建物や人の気配や匂いは隠せるが、存在自体を消せるわけではない。人数が増えるほど痕跡が残り、鬼舞辻に見つかる確率も上がる」
珠世は悲しげな顔をしてうつむいた。まるで、自分のしてきたことを激しく悔いているように。
「貴女と二人で過ごす時を邪魔する者が、俺は嫌いだ。大嫌いだ!!許せない!!!」
完全に再生した愈史郎の口から、これ以上ない程の怒りの言葉が飛ぶ。彼の眼には、襲撃者たちへの激しい憎悪と怒りが見て取れた。
一方、そんな言葉を投げかけられても、朱紗丸は心底楽しそうに笑うと。羽織を脱ぎ捨て袂を開き着物をはだけさせた。
「キャハハハ!何か言うておる。面白いのう、面白いのう」
――十二鬼月である私に殺されることを、光栄に思うがいい。
十二鬼月。聞いたことのない言葉に、汐と炭治郎がその名を口にすると、珠世が背後から答えた。
「鬼舞辻直属の配下です」
朱紗丸は再び笑うと、体に力を込める。すると胸元が震えたかと思うと、新たな二対の腕が生えてきた。
六本になった腕に、先ほどの毬を持ち身構える。
「さあ、遊び続けよう。朝になるまで。命尽きるまで!!」