第24章 襲撃<壱>
「くそっ!禰豆子!奥で眠っている女の人を、外の安全なところへ運んでくれ!」
炭治郎が禰豆子にそういうと、珠世は外は危険であるから地下室を使うように促した。禰豆子はうなずくと、毬の合間を縫って治療室へ向かった。
炭治郎はそれを見届けると、汐に立てるか尋ねる。汐は二つ返事をすると、彼と共に彼方を構えた。
外では朱紗丸が「一人殺した」と笑いながら言っていた。どうやら、愈史郎が鬼であることに気づいていないようだ。
彼女の眼を見て、汐は戦慄した。鬼舞辻程ではないが、今まで遭遇した鬼のものとは明らかに違う。長い間見ていると吐き気がこみ上げてきた。
それは隣にいた炭治郎も同じだった。肺の中に入ってくる、濃く重い匂い。二人の顔から汗が流れた。
「ん?耳に花札ようなの飾りのついた鬼狩りと、青髪の娘は・・・お前等じゃのう?」
朱紗丸の言葉に、二人の顔が強張った。
(こいつ・・・、あたしと炭治郎を狙ってきたっていうの?じゃあまさか、こいつらは鬼舞辻の命令で・・・)
だとしたらここで戦えば、珠世達まで巻き込んでしまう。汐は炭治郎と顔を見合わせると、珠世達のほうを向いていった。
「珠世さん。身を隠せる場所まで下がってください!」
「あいつらの狙いはあたしたちよ。あんたたちを危険な目に合わせるわけにはいかないわ」
しかし珠世は静かに首を横に振った。
「炭治郎さん、汐さん。私たちのことは気にせず戦ってください。守っていただかなくて結構です」
――鬼ですから
そう言った珠世の眼が、少し悲しげに揺れたことを汐は見逃さなかった。
「それじゃあ、これで終わりじゃあ!」
朱紗丸が二つの毬を、汐と炭治郎に向かって投げつける。すさまじい轟音と土煙を上げながら、毬は二人に迫ってきた。
(よけたってあの毬は曲がるわ。だったら・・・!)
「汐!合わせてくれ!」
汐の考えを読んでいたように炭治郎が叫んだ。彼の考えを瞬時に理解した汐は、体を一歩引き、突きの構えをとる。
――全集中・海の呼吸――
――全集中・水の呼吸――
――結の型
――磯鴫波紋突き・曲!!
二人の寸分の狂いもない突きが、毬を貫通し動きを止める。斜めから曲線的につくことで、毬の威力を緩和したのだ。