第24章 襲撃<壱>
「キャハハ!矢琶羽のいう通りじゃ。何もなかったところに建物が現れたぞ」
「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようだな。しかし、鬼狩りと鬼が一緒にいるのはどういうことじゃ?だが、それにしても」
矢琶羽と呼ばれた男の鬼が、女の鬼に顔を向ける。
「朱紗丸。お前はやることが幼いというか短絡的というか。儂の着物が塵で汚れたぞ」
矢琶羽は着物を払いながら、忌々しそうに朱紗丸と呼んだ女の鬼に顔を向ける。
「うるさいのぅ。私の毬のおかげですぐに見つかったのだからよいだろう。たくさん遊べるしのう!」
そう言って朱紗丸は再び毬を屋敷の壁に投げつける。轟音と砂塵を上げて毬は壁を砕くと、再び彼女の手元へ戻った。
「ちっ。またしても汚れたぞ」
矢琶羽は顔をしかめ、再び着物を払う。そんな彼を見て朱紗丸は「神経質めが」と小さくつぶやいた。
砂塵が収まると、壁に空いた大きな穴から人影が見える。朱紗丸の黄色い目がその姿を見つけると大きくゆがんだ。
「キャハハハ!見つけた見つけた」
朱紗丸は楽しそうに笑うと、毬をてんてんと何度もついた。
(毬を投げてこれだけいろいろなものをぶっ壊せるなんて・・・なんて威力なの・・・)
炭治郎とともに禰豆子を庇いながら、汐は思わずごくりと唾をのむ。一方愈史郎も、珠世を庇いながら外を睨みつけた。
(あの女、鬼舞辻の手下か!)
朱紗丸は楽しそうに笑いながら再び毬を投げつける。毬は不規則な動きをしながら縦横無尽に飛び回り、あちこちを破壊する。その速度と破壊力に、皆うかつに動くことができない。
毬の一つが愈史郎に向かって飛んできたため、彼は体をひねってよけようとした。だが、毬は空中で一瞬停止すると急に方向を変え愈史郎の頭部を破壊した。
潰れるような嫌な音とともに、血と肉体の一部が飛び散る。
「ゆっ・・・」
「愈史郎さん!!」
頭部を失った愈史郎の体が傾き、それを珠世がとっさに受け止める。毬はそれでも勢いを衰えさせずに周りを飛び回る。