第23章 遭遇<肆>
「そう。愈史郎さんの言う通り、あんたは悪くないわ。あんたは医者としてするべきことをした。それはわかってる。でも、あたしはそんなできた人間じゃないから、簡単にははいそうですかって納得はできない。それに、もう終わったことだもの」
「終わった?」
「知らなかった?おやっさんは毒で死んだんじゃないの。あの後鬼になって、あたしが倒した。あたしのせいで、完全に鬼になったから・・・」
「汐の・・・せい?」
玄海が完全に鬼になってしまったのは、自分のせい。初めて聞く言葉に、炭治郎は息をのんだ。それは珠世も愈史郎も同じらしく、目を見開いたまま汐を見ていた。
「それ、いったいどういうことなんだ?汐のせいで鬼になったって・・・」
炭治郎が訪ねると、汐は自嘲気味な笑みを浮かべ炭治郎を見た。そして、嘲るような口調で話し出す。
「薬が毒だってわかった時、あたしおやっさんを罵ったの。二度と父親面するなって。その直後よ。おやっさんが鬼になったのは。だから、あたしのせいでおやっさんは鬼になった。だから本当は、あたしは・・・」
汐がそこまで言いかけた瞬間、突然愈史郎が鋭く叫んだ。
「伏せろ!!」
その言葉を言い終わる前に、突然屋敷の壁が砕け何かが飛んできた。それは汐たちの頭上を縦横無尽に駆け、あたりのものを次々に破壊していく。
明かりが消え、暗闇に包まれた部屋の中で、轟音と共に砂煙がもうもうと立ち上る。
(敵襲か!?)
炭治郎と汐は禰豆子の頭を抱え、愈史郎は珠世の頭を抱え、それから守ろうとする。
屋敷の砕けた壁の向こう側に、襲撃者の姿が見えた。相手は二人。二人が狂気じみた笑みを浮かべながら立っていた。
「キャハハハ!!何処じゃ何処じゃ?耳飾りをつけた鬼狩りと、青髪の娘は何処じゃ?」
女の鬼の楽しげな声が響くと同時に、再び轟音が彼らを襲った。