第158章 不滅<参>
悲鳴嶼は一人、輝哉に呼ばれて産屋敷邸を訪れていた。
周りに他の柱の姿はなく、彼だけが極秘で呼び出されたのだ。
『五日・・・以内に、無惨が・・・くる・・・』
床に臥す輝哉の言葉に、悲鳴嶼は小さく息をのんだ。
『私を・・・囮にして・・・無惨の頸を・・・取ってくれ・・・』
『・・・何故そのように思われるのですか?』
悲鳴嶼は微かに表情を強張らせながらも、冷静を装いながら尋ねた。
『ふふ・・・勘だよ・・・、ただの・・・。理屈は・・・ない・・・』
輝哉は小さく笑いながらそう言った。
産屋敷家はワダツミの子同様特殊な声を持っていたが、それ以上にこの"勘"というものが凄まじかった。
"先見の明"ともいう、未来を見通す、所謂予知能力というものだった。
この力により彼らは財を成し、幾度もの危機を回避してきていた。
『他の・・・子供たちは・・・私自身を・・・囮に使うことを・・・承知しないだろう・・・。君にしか・・・頼めない・・・。行冥・・・』
輝哉の弱弱しくも真剣な声に、悲鳴嶼は涙を流しながら頷いた。
『御意。お館様の頼みとあらば』
『ありがとう・・・』
輝哉は心からの感謝の言葉を述べた。
『どうか・・・、もうこれ以上・・・私の大切な子供たちが・・・死なないことを・・・願って』
その姿が、悲鳴嶼にとっての彼の最後の姿だった。
産屋敷輝哉という人の決意と魂を決して無駄にしないために、必ず鬼舞辻無惨を討ち倒す!
託された想いを乗せながら、悲鳴嶼は日輪刀を振るった。
手ごたえはあった。だが、悲鳴嶼は違和感を感じていた。
鬼が死ぬときの灰のような匂いはせず、奇妙な音まで聞こえてきた。
(・・・やはり!!)
悲鳴嶼は硬かった表情を更に強張らせながら、その光景を見ていた。
(お館様の読み通り、無惨、この男は)
――頸を斬っても、死なない!!
悲鳴嶼に砕かれた無惨の頭部は、凄まじい速度で再生していた。