第158章 不滅<参>
『行冥』
悲鳴嶼は輝哉から無惨襲撃を告げられた後、ある事を告げられていた。
『恐らく無惨を滅ぼせるのは・・・、日の光のみではないかと思っている・・・。君が頸を破壊しても彼が死ななければ、日が昇るまでの持久戦となるだろう・・・』
その予測通り、無惨は頸ごと頭部を破壊されても死ぬことはなかった。
(さらにこの肉体の再生速度。音からして、今まで退治した鬼の比ではない)
悲鳴嶼は投げた鋼鉄球を戻しながら考えた。
(お館様による爆破と、協力者による弱体化があっても、これほどの余力を残した状態。夜明けまで、この化け物を日の差す場に拘束し続けなければならない)
勿論、無惨もこのまま黙って拘束され続けているような男ではない。
無惨は珠世から左手を離すと、悲鳴嶼へと向けた。
悲鳴嶼が目を見開くと同時に、無惨の腕から有刺鉄線のようなものが生えだした。
――黒血枳棘(こっけつききょう)
無惨の血気術と思わしきものが、悲鳴嶼の周りに展開し覆い尽くそうとした。
――岩の呼吸 参ノ型――
――岩軀の膚(がんくのはだえ)
悲鳴嶼は鎖斧の刃と鉄球を自身の周囲に振り回し、向かってきた血気術を一瞬で薙ぎ払った。だがそれでも、黒い棘は尽きることなく無惨の腕から生え続けた。
その時だった。
「テメェかァアア!!」
空気を斬り裂くような鋭い声が、あたり中に響き渡った。
「お館様にィイ、何しやがったァアーーー!!!」
それは、鬼のような形相で叫ぶ実弥の声だった。
その声を皮切りに、あちこちから人の気配がする。
(柱達が集結。お館様の采配、見事・・・)
「お館様ァ!!」
「お館様」
森の中から飛び出してきたのは、蜜璃と伊黒の二人。その後からも次々と柱達が飛び出してきた。
「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!」
悲鳴嶼の雷のような怒鳴り声が響き渡る。
「奴は頸を斬っても死なない!!」
その声に、皆の表情が大きく変化し、目の前にいる男を凝視した。
(!!!!コイツがァ!!!)
(あれが・・・!!)
(あの男が!!)
実弥、蜜璃、伊黒の顔が強張り、
(奴が・・・・!!)
(鬼舞辻!?)
義勇、しのぶの顔が鋭くなり、無惨がこちらを振り向いた時だった。
「無惨!!」
炭治郎の怒りに満ちた声が響き渡り、
「貴ッ様ァアアー!!!」
汐の殺意に満ちた怒鳴り声が重なった。