第158章 不滅<参>
「悲鳴嶼さん、お願いします!!」
珠世の声と共に、背後で人の気配がした。無惨が振り返れば、そこには両目から涙を溢れさせた悲鳴嶼が、棘の付いた鋼鉄球を構えながら突っ込んできていた。
「南無阿弥陀仏!!」
悲鳴嶼はそのまま無惨の頭部に、その鉄球を叩きつけた。骨が砕ける鈍い音と共に、肉片が飛び散った。
悲鳴嶼にその光景は見えないが、音と充満する血の匂いで、無惨の頭部が破壊されたことを察した。
しかし悲鳴嶼の表情は硬いままだった。
悲鳴嶼は思い出していた。初めて産屋敷輝哉という人に出会った時のことを。
無実の罪で投獄されていた所を助けてくれた、命の恩人。
出会った時の輝哉は十四歳で、悲鳴嶼は十八歳だった。
だが、その立ち振る舞いは四つも年下だとは思えない程のものだった。
『君が人を守るために戦ったのだと、私は知っているよ。君は人殺しではない』
彼はいつでも、その時人が欲しくてやまない言葉をかけてくれる人だった。
だからこそ、多くの柱は彼を崇拝するのだ。
(お館様の荘厳さは、出会ってから死ぬまで変わることがなかった)
悲鳴嶼は思い出していた。彼がなぜ、無惨の襲撃を予測し、奇襲することができたのか。
それは五日ほど前に遡る。