第158章 不滅<参>
(肉の種子、血気術!!)
無惨が認識すると同時に、種子から無数の棘が瞬時に飛び出し無惨の体中を突き刺した。
(固定された。誰の血気術だ、これは。肉の中でも棘が細かく枝分かれして、抜けない)
無惨は全く予想していなかった血気術に一瞬混乱するが、すぐに冷静さを保とうと試みた。
(いや、問題ない。大した量じゃない。吸収すればいい)
全ての鬼の始祖である無惨にとって、鬼のものである血気術は自分の身体の一部のようなものだった。
すぐさま集中し、棘の血気術を吸収し始めた。
その時だった。
腹部に衝撃を感じ、無惨は意識をそちらに向けた。
何かがいる!
無惨は反射的に左腕で"それ"を掴み、そこに現れた者を見て驚愕を露にした。
「珠世!!」
珠世は苦悶の表情を浮かべながらも、左腕を無惨の鳩尾に突き刺していた。
「何故お前がここに・・・」
思わぬ襲撃者に無惨が声を荒げると、珠世は無惨を見据えながら言い放った。
「この棘の血気術は、貴方が浅草で鬼にした人のものですよ」
無惨は一瞬だけ眉根を動かすが、珠世の身体に張り付けられている奇妙な文様の紙を見て、ここまで接近されるまで気づかなかったのは目くらましの血気術のせいだと勘づいた。
(目的は?何をした?何のためにこの女は)
「吸収しましたね、私の拳を。拳の中に何が入っていたと思いますか?」
しかし無惨が答える前に、珠世は高らかに叫ぶように言った。
「鬼を人間に戻す薬ですよ。どうですか、効いてきましたか?」
その言葉が無惨の耳には言った瞬間、無惨ははっきりと表情を変えた。