第157章 不滅<弐>
「ひとつとや、一夜明くれば賑やかで、賑やかで。お飾り立てたり松飾り、松飾り」
そこには輝哉の娘と思しい白髪の少女二人が、紙風船を飛ばしながら戯れていた。
「二つとや二葉の松は、色ようて色ようて。三蓋松は上総山、上総山」
それは主に元旦や新春に歌われるわらべ歌、正月の数え歌だった。
歌、を聞いて無惨は微かに眉をひそめた。まるで歌というものを嫌悪するかのように。
(・・・この奇妙な懐かしさ、安堵感、気色が悪い)
無惨は胸の中に湧き上がってくるものを、心から嫌悪するように強く顔を歪めた。
(そしてこの屋敷には四人しか人間がいない。産屋敷と妻、子供二人だけ。護衛も何もない・・・)
てっきり敵襲に備え、柱の一人や二人ほどはいると思った無惨は、その警備の甘さに拍子抜けした。
「当てようか、無惨」
不意に発せられた声に、無惨の意識は再び輝哉へと向けられた。
「君の心が私にはわかるよ。君は永遠を夢見ている・・・。不滅を夢見ている・・・」
「・・・・、その通りだ」
無惨は思案するように言葉を切ったが、すぐに淡々と答えた。
「そしてそれは間もなく叶う。禰豆子を手に入れさえすれば」
太陽を克服した唯一の鬼、竈門禰豆子。今の無惨が喉から手が出る程欲しい、稀有な存在。
それは千年間無惨がずっと心待ちにしていた、完全な存在になるための鍵。
しかし輝哉は、穏やかな声で静かに否定した。