第157章 不滅<弐>
――海の呼吸・壱ノ型――
――潮飛沫
低い姿勢から跳躍し、まるで飛び交う飛沫のように汐は木刀を振り抜いた。
――弐ノ型――
――波の綾
かと思えば、今度は波間を泳ぐような緩やかな足運びで木刀を振るう。
穏やかさと荒々しさを兼ねそろえた、文字通り海のような動きに、炭治郎は勿論義勇も思わず魅入ってしまっていた。
それから時間は経ち、いつの間にかあたりは暗くなり夜の帳が降りようとしていた。
「うわっ、もう暗くなってる!?」
余程夢中になっていたのか、汐は驚いたように声を上げた。
「それだけ汐が集中してたってことだろう?義勇さんもありがとうございました」
「ありがとう」
二人は義勇の方に向き合うと、深々と頭を下げた。
「俺は礼を言われるようなことはしていない。むしろ、礼を言うのはこちらの方だ。海の呼吸、中々興味深かった」
「面と向かって言われると照れるわね。でも、あんたに興味を持ってもらえてよかったわ。ところで・・・」
汐は小さくため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。
「あんたね、人と話す時はきちんとこっちを向きなさいよ。会話の基本中の基本よ、それ」
「・・・尽力する」
「尽力する以前の問題だと思うわよ。炭治郎、あんたも何か言ってやってよ」
汐に話を振られ、炭治郎は面食らいながらも何かを言おうとした、その時だった。
「カァ、カァ!!」
とつぜん鴉がけたたましく泣き喚き、汐達の元へ飛び込んできた。