第156章 不滅<壱>
「邪魔してすみません」
「いや、そんなことはない」
謝る炭治郎に、義勇は首を横に振ってこたえた。
「俺は上手く喋れなかったし、不死川はずっと怒っていたから。でも、不死川の好物がわかって良かった」
義勇は、明後日の方向を向きながら呟くように言った。
「今度から懐におはぎを忍ばせておいて、不死川に会う時あげようと思う」
「あー!それはいいですね」
義勇の突拍子もない提案を、炭治郎は何の疑いもなく肯定した。
「そうしたらきっと仲良くなれると思う」
「俺もそうします!」
義勇は微かに笑みを浮かべ、炭治郎は満面の笑みで賛同する中、汐は静かに口を開いた。
「いいわね、それ。じゃああたしは、激辛唐辛子を仕込んだ特製おはぎをあいつの口の中に放り込んでやるわ!」
二人と歯は異なり、汐は邪な笑みを浮かべながらそう言った。
「ところで大海原。気になっていたんだが、さっき不死川に言っていたあの言葉の意味はなんだ?」
「言葉?」
義勇の言葉に炭治郎が聴き返すと、汐の顔がみるみる青くなった。
「ああ。さっき大海原が不死川と言い争っていた時、聞いたことのない言葉を発していたんだ。確か・・・」
義勇が口を開いた瞬間、
「あぎやあああああ!!」
汐は奇声を上げながら飛び掛かり、義勇の口を塞いだ。
「言わなくていいの!あんたにはまだ早い!!」
「ふぁが(だが)・・・」
「い・う・な!それ以上言ったら、口を引き千切るわよ・・・!」
汐が殺気を孕んだ目を義勇に向けると、義勇と炭治郎は同時に身体を震わせた。
(汐、前より狂暴になってないか・・・?俺はとんでもない人を好きになってしまったのかも・・・)
炭治郎は心の中で、そう小さく嘆くのだった。