第156章 不滅<壱>
炭治郎は顎を強打されたせいか、目を回して微かに泡も吹いていた。
義勇は自分の羽織を脱いで炭治郎の頭の下に敷き、汐も羽織を脱ぐと身体の上にそっとかけた。
「驚かせてしまってすまなかった」
「別に構わないわよ。あたしだってあんたにいろいろと迷惑をかけたし。タユウから詳細は聞いてるんでしょ?」
汐が尋ねると、義勇は表情を変えないまま頷いた。
「まあそんなわけで、あたしは普通の人間じゃなかった。でも、鬼を倒して大切な人を守りたいって気持ちは嘘じゃない。だからあたしは、鬼殺隊士大海原汐と言う"人間"として最後まで戦うわ」
汐は決意に満ちた声でそう言った。その曇りない瞳に、義勇は初めて汐に会った時のことを思い出していた。
「ところで、なんであいつがここに居たの?いくら仲が悪くても、今仲間割れしてる場合じゃないと思うんだけど」
「そうじゃない。実は・・・」
義勇が詳細を言いかけた時、
「あららっ?あれ?」
気を失っていた炭治郎が、素っ頓狂な声を上げながら起き上がった。
「おはよう、炭治郎」
汐が声を掛けると、炭治郎はきょとんとした表情でこちらを見た。
「気分はどう?あんた、あいつにぶん殴られて気絶してたのよ?」
「そうだったのか。で、不死川さんは・・・」
「不死川は怒ってどこかへ行ってしまった」
汐の代わりに義勇が答えた。
「そうですか・・・。どうして喧嘩してたんですか?」
炭治郎が尋ねると、義勇は視線を合わせないまま口を開いた。
「喧嘩ではなく柱稽古の一環で、柱は柱同士で手合わせしているんだ」
「何だ、そうだったの」
「どうりで木刀だったし・・・そうかそうか」
汐と炭治郎は納得したように手を鳴らした。