第155章 真実(後編)<肆>
外から聞こえる鳥の声を聞いて、炭治郎はゆっくりと目を開けた。いつの間にか夜は明け、朝の光が窓辺から差し込んでいる。
(俺は、眠っていたのか・・・。じゃあ、あれは夢・・・か?)
段々と意識がはっきりしてきた炭治郎は、汐の事を思い出して慌てて体を起こした。
しかし汐は、炭治郎の目の前で静かな寝息を立てていた。
汐が傍にいる事に胸をなでおろしながら、炭治郎は先程の事を思い出していた。
(でも夢にしては凄く鮮明だった。もしもあれが本当なら、汐は・・・)
炭治郎は眠る汐を見て、悲しそうに目を細めた。
炭治郎が知らなかったところで、汐は死に至る程の傷を負い、花の力によって再び蘇った。
過去と寿命を犠牲にして。
(じゃあ汐は、あまり長く生きられないってことか・・・?)
還り咲きがどれほど寿命を減らすかは分からない。だが、それでも汐は命を削っても今を生きている。
鬼を殺し、花が生きるための世界にするため。
あまりにも理不尽で身勝手な理由だと炭治郎は思ったが、花がなければ自分は汐と出会うことはなかっただろう。
そして家族とは少し異なる思いを抱くことも、なかったかもしれない。
「汐・・・」
炭治郎は汐の名を呼び、もう一度手を握った。血の通った、温かいその手を。
「う・・・ん・・・」
すると、汐の瞼が微かに震え、口から小さな声が漏れた。