第155章 真実(後編)<肆>
「っ!」
炭治郎は汐の手を放し、姿勢を正した。汐は身体をもぞもぞと動かしながら、ゆっくり目を開いた。
「あれ、あたし・・・」
汐がかすれた声でそう言うと、炭治郎は胸を抑えながら歯切れのいい声で言った。
「おはよう、汐」
その言葉に、汐はゆっくりと顔を向けようとして――
小さく悲鳴を上げて布団をかぶった。
「ええっ!?どうしたんだ汐!?」
汐の思わぬ反応に、炭治郎は慌てて立ち上がった。
「み、見ないで。今のあたしを見ないで・・・」
汐の声は震え、身体も震えているのが布団越しに伝わってきた。
炭治郎は座りなおし、汐に声を掛けようとしたときだった。
「あたし、あたし。あんたにまたみっともない姿を見せちゃった。あんたに悲しい思いをさせないって、泣いている顔をさせないって思ってたのに、またあんたを苦しめた」
「そんなこと・・・」
ない、と言いかけた炭治郎の言葉を、汐は遮った。
「でも、でもね。あたし、今までやってきたことを無駄になんてしたくない・・・」
汐は布団をかぶったまま、胸の内を吐き出すように言った。
「こんなへんてこな身体だけど、それでも、あたしは最後まで、大海原として最後の最後まで足掻いて、戦うから。必ず、皆を、あんたを守るから。だから、お願い。あたしと一緒に、いてくれる?」
汐の言葉に、炭治郎は言葉を失った。いつもの汐からすれば随分と小さな声だったが、決意が込められた迷いのない言葉だった。
こみ上がってくる熱いものをこらえながら、炭治郎は口を開いた。