第155章 真実(後編)<肆>
炭治郎がそう言った瞬間、番人の布越しの顔に一筋の光が伝った。それに気づいたのか、炭治郎は慌てて近寄った。
「だ、大丈夫か?な、何か拭くものを・・・」
『ふふふ・・・』
番人は零れた涙を脱ぐながら、小さく笑った。嘲笑でも失笑でもない、嬉しさからの笑いだった。
『いや、君には本当に驚かされる。君という存在があったからこそ、大海原汐は人間として心を保ってきたのだろう。いや、君がいる限り、汐は人であり続けるだろう』
番人はそう言って、炭治郎に頭を下げた。
『感謝する、竈門炭治郎。君にまた会えて、本当に良かった』
「そんな、俺は・・・」
炭治郎が何かを言いかけた時、突然炭治郎の身体が白く発光し始めた。
『どうやら時間のようだ。本来なら君がここに現れること自体が特異だったからな。君は本当に、不可思議な存在だ』
番人は呟くように言うが、炭治郎には聞こえない。そのまま光は強くなり、やがて辺りを真っ白に染めた。
『だからこそ、私は信じている。君が、この悍ましい因縁を断ち切る、"心の鬼"を滅する刃になることを・・・』
番人はそう言って殺意の扉を見上げた。扉はただ静かに、番人を見下ろしているだけだ。
『もしその時が来たら、お前はどうする?正直私はもう、疲れ始めているんだよ・・・。だからもう・・・』
番人のかすれた声が、無意識領域に静かに響いた。