第155章 真実(後編)<肆>
「か、還り、咲き」
『正解、だ』
震えた声で答えると、番人は布越しに口元を思い切り歪めながら言った。
『君の推察通り、大海原汐は一度致命傷を負い、ウタカタノ花の自己防御能力【還り咲き】を発現。汐の記憶と寿命、そして肉体の成長を対価に蘇生した。だから、君との肉体的年齢との差が失われた』
「そんな・・・!どうして汐がそんなことに・・・!?」
炭治郎が尋ねると、番人は首を横に振った。
『その時の記憶はすでに抹消されている。かつての汐の記憶と同様にな。それより話を戻そう』
悔しそうに顔を歪める炭治郎をよそに、番人は静かに語りだした。
『還り咲きを起こした汐は過去の記憶を失い、再び生命活動を開始した。その時に大海原玄海と今一度出会い、新たな力と人格を生み出した。それが君達がよく知る【大海原汐】というわけだ』
「じゃあ、俺が記憶の中で見たあれが、汐の本来の人格だっていうのか?」
炭治郎の言葉に、番人は静かにうなずいた。
『かつての汐は、どういうわけか花の影響が強く出ていた。その為感情が希薄で人としての心が形成されていなかった。通常は花の浸食がすすんでいくにつれ、人の心は失われていくのだが、汐は最初から特異だった』
番人は思い出すように首を傾けながら続けた、
『だが、玄海と出会い、君の家族に触れることで少しずつ、人としての心が作られていたのだろう。そのせいか、新たに生み出された人格は、あまりにも本能に忠実になってしまっているがな』
番人は小さく笑うが、その笑い声は虚しく響くだけだった。