第155章 真実(後編)<肆>
『どうした?』
何もない方向を見つめる汐に、男は怪訝な顔で問いかけた。
『・・・何でもない。それより、これ以上ここに長居をするわけにはいかない』
汐は立ち上がり、着物についた雪を払うと男を見据えていった。
『さっさと行くぞ、玄海』
名を呼ばれた玄海は、驚きつつも嬉しそうに笑った。
汐はその笑顔の意味を理解できなかったが、吊られるように口元に笑みを浮かべた。
『じゃあ、俺達は行くぜ。達者でな、炭十郎。嫁さんとガキ共を大切にしろよ』
『はい、あなたもお元気で。玄海さん』
二人はそう言葉を交わし、にっこりと笑った。