第22章 遭遇<参>
「なんで・・・どうしてこの模様がこんなところに・・・?」
困惑する汐に、少年は当然だというように鼻を鳴らす。
「お前の父親にあれを送ったのは、ほかでもない。あの方なのだから」
「何よそれ、どういうこと?」
汐が声を上げると、炭治郎は怪訝そうな顔で彼女を見つめる。しかし少年は答えずに屋敷の中へ入っていってしまった。
仕方がないので汐達も屋敷へお邪魔することにした。
「ただいま戻りました」
少年が扉を開けると、そこには先程の女性の鬼と、肩を怪我した女性がベッドに横たわっていた。どうやら彼女がここへ運び治療をしてくれていたらしい。
「先ほどはお任せしてすみません。奥さんは・・・」
「この方なら大丈夫ですよ。ご主人は気の毒ですが、拘束して地下牢に」
そういう女性の鬼は、酷く悲しげな表情を浮かべていた。そんな彼女の横顔に、炭治郎が声をかける。
「人の怪我の手当てをして、辛くはないですか?」
それは鬼である彼女を気遣っての言動であったが、それを制止するかのように少年の拳が炭治郎の胸元に当たる。
「鬼の俺たちが血肉の匂いに涎を垂らして耐えながら、人間の治療をしているとでも?」
少年の言葉に炭治郎は失言だったことに気づき、小さな声で謝った。そんな少年を、女性の鬼は静かに諫めた。
「名乗っていませんでしたね。私は珠世と申します。その子は愈史郎。仲良くしてやってくださいね」
珠世がそういうと、炭治郎は思わず隣の愈史郎を見るが、彼はまるで番犬の様に目を鋭くさせうなり声をあげていた。
(こりゃ無理ね)と、汐は早々にあきらめた。