第22章 遭遇<参>
少年に連れられてやってきたのは、何の変哲もない袋小路だった。こんなところに何の用があるのかわからず、汐は首をかしげる。
一方炭治郎は、先ほど彼に禰豆子を醜女呼ばわりされた怒りが収まらず、いまだに騒ぎ続けている。
だが、少年は全く気にする様子もなく、そのまま壁に向かって突き進んだ。すると不思議なことに、彼の体は溶けるように壁に吸い込まれていった。
「へ?」
汐が思わず素っ頓狂な声を上げると、流石の炭治郎も口を閉ざす。すると少年の頸だけが壁からはみ出し「早く来い」とせかす。
汐達は少し困惑しながらも壁に向かって踏み込んでみた。すると、固い壁の感触は全く感じずそのままするりと向こう側に進むことができた。
そこにあるものを見て、汐達は息をのんだ。そこには大きな西洋風の建物が静かに鎮座していた。
行き止まりの向こう側に屋敷があったことに驚く二人。少年はそんな二人を促した後、警告するかのように声を荒げた。
「俺はお前たちなどどうなっても構わないが、あの方がどうしてもというから連れてきたんだ。くれぐれも、くれぐれも失礼のないようにしろ」
殆ど脅迫に近いその言動や行動に、炭治郎は思わずうなずく。その時、汐の視線がふと、壁につけられたものに止まる。
それを認識した瞬間、汐の体が強張った。
そこに張り付けられていたのは、目のような文様が描かれた呪符のようなものだ。だが、汐はこの文様に覚えがあった。
それはかつて。養父玄海の薬を買いに行ったとき、薬を運んできた猫がつけていたものと全く同じものであった。