第154章 真実(後編)<参>
(な、なんだ・・・?)
炭治郎は目の前の状況を理解しようとしたとき、左手に握られていた青い花弁が光り出した。
思わず視線を向けると、先ほどまで五枚あった花弁が一枚減っていた。
(まさか、場面が切り替わるたびに花弁が減っていくのか・・・?)
だとしたらあと四回。あの番人は炭治郎に見せたいものがあるということになる。
番人の意図が全く分からず混乱していると、目の前で誰かが動く気配がした。
意識を戻せば、聞こえてきたのは優しい歌。
『こんこん小山の子うさぎは、なぁぜにお目々が赤ぅござる』
炭治郎はこの歌を知っていた。いや、忘れるはずがなかった。
『小さい時に母さまが、赤い木の実を食べたゆえ、そーれでお目々が赤ぅござる』
それはかつて、禰豆子が鬼の力に飲まれそうになった時に決死の覚悟で歌った歌。
母が何度も歌っていた、子守唄だった。
炭治郎の視線の先には、幼い炭治郎の頭をなでながら歌を奏でる葵枝の姿があった。
記憶の中と同じ優しい母の歌に、炭治郎の目に涙が浮かぶ。
その時だった。
『それは、なんだ?』
不意に声が聞こえてきて、炭治郎と葵枝は顔を上げた。そこには、先ほどの青い髪の少女が葵枝を見つめていた。
どういうわけか、炭治郎の位置からは少女の顔は見えなかった。