第154章 真実(後編)<参>
「俺だ。急ですまないが、すぐに湯を沸かしてくれ!」
外から聞こえた声は、炭治郎の父炭十郎の声。葵枝は一瞬驚いた顔をするものの、すぐに行動に移した。
葵枝が去ってからすぐに、扉が音を立てて開かれ、外の冷たい空気と雪が一気に入り込んできた。
『とうさん!』
幼い炭治郎は父親の傍に駆け寄ろうとして、思わず足を止めた。そこにいたのは、炭十郎一人ではなかったからだ。
彼の傍にもう一人、見知らぬ男がいた。
炭十郎よりも背が高く、体格のよい男だった。だが、男は苦しそうに息を吐きながら、炭十郎と共に部屋になだれ込んだ。
『大丈夫ですか!?気をしっかり!』
炭十郎が叫ぶと、男は首を横に振りながら、かすれた声で言った。
『俺は、大丈夫だ・・・。それよりも、こいつを・・・、こいつを頼む・・・』
男の左腕には、蓑にくるまれた何かがあった。炭十郎は頷くと、それを優しく抱えて居間へと上がり、そのまま寝室へと駆け込んだ。
幼い炭治郎は何が起こったのか分からず目を白黒させていたが、慌ただしく動く両親を見て何か"よくない事"が起こっていることを悟った。
幼い炭治郎はそっと寝室を覗いて、あっと声を漏らした。
布団の上に横たわっていたのは、真っ青な髪をした少女だった。