第154章 真実(後編)<参>
ふわりと鼻を掠める懐かしい匂いに、炭治郎は目を開けた。
最初に目についたのは、見覚えのありすぎる部屋。囲炉裏から聞こえるのは、燃える薪が爆ぜる音。
そこはかつて、炭治郎と禰豆子が家族と暮らしていた生家だった。
(ここは俺の家・・・!?なんでここに・・・)
困惑する炭治郎だが、自分の左手が青く光っているのを見て視線を向けた。
その手にはいつの間にか五枚の花弁のようなものがあり、一枚が青い光を放っていた。
だが、炭治郎がそれに疑問を持つ前に、目の前の人物を見て息をのんだ。
そこには幼い自分と、お腹の大きい、今は亡き母親葵枝がいた。
(母さん・・・!!)
母を見て、炭治郎の目頭が熱くなった。母親に寄り添って舟をこぐ幼い炭治郎と、それを優しい目で見ながら頭をなでる葵枝。
おそらく禰豆子が生まれる前の事だろう。
(でもどうして、俺の家族が?これは夢なのか?あの子は、俺に一体何を見せるつもりなんだ・・・?)
炭治郎は番人の意図が分からず首を捻っていると、突然家の戸を叩く大きな音がした。
その音に幼い炭治郎は驚き、葵枝は炭治郎をなだめながら立ち上がった。
「どなた?」
葵枝が声を掛けると、間髪入れずに外から声が聞こえた。