第153章 真実(後編)<弐>
先程のワダツミの子の話を、未だに信じ切ることは出来ないでいた。
(どうして、どうして汐がこんな目に遭わなければいけないんだ・・・。汐が一体何をしたっていうんだ・・!)
炭治郎は汐のことを思うと悔しくてたまらなかった。汐の運命を狂わせたウタカタノ花を心底恨めしく思った。
だが、それでも汐が汐であることは変わらないし、ワダツミの子だろうが何だろうか関係ない。そう思っていた。
(汐ともう一人の汐に伝えたこと。あれは紛れもなく俺の本心だ。けど、今思うと一つだけ。俺は無意識に汐に嘘をついていた・・・)
炭治郎は目を閉じながら、ゆっくりと顔を上げた。
『お前は大海原の事を好きなんだよ!!』
悲鳴嶼邸で村田達に指摘された言葉が、炭治郎の脳裏によみがえった。
(ああ、そうか。そうだったんだ)
炭治郎は目を開けると、眠る汐をもう一度見つめた。
初めて出会った時から、今の今までずっと汐が傍にいた。どんなに辛くても苦しくても、汐が傍にいて支えてくれた。
汐の存在に、ずっと助けられてきていた。
(村田さん達に指摘されるずっと前から。俺は――)
――大海原汐が、好きなんだ。仲間や家族としてだけじゃなく、一人の女性として、もっともっと特別な意味で。