第22章 遭遇<参>
うどんを食べ終えた三人は、屋台を離れ夜道を歩く。すると不意に禰豆子が二人の羽織を引っ張った。
勢いあまってつんのめりそうになるが、寸でのところで踏みとどまる。禰豆子を見ると、警戒した表情で前を見ている。
汐と炭治郎が振り返ると、そこにいたのは。先ほど出会った鋭い目つきをした、鬼の少年だった。
「あんたはさっきの・・・」
汐が口を開くと、彼はふんと小さく鼻を鳴らした。
「待っていてくれたんですか?」
「お前らを連れてくるようにと、あの方に言われたんでな」
「俺は匂いをたどれるのに」
「目くらましの術をかけている場所にいるんだ。辿れるものか」
当たり前だろう、と言わんばかりに少年は高圧的に言った。その態度に汐は少し顔をしかめる。
「それよりも・・・」
少年は言葉を切ると、人差し指を禰豆子に向かって伸ばした。
「鬼じゃないかその女は。しかも、【醜女(しこめ)】だ」
少年の言葉に、汐と炭治郎の思考が停止する。今、彼は何と言ったのだろう。
(しこめ?しこめって、不細工ってことよね。誰が?)
汐と炭治郎は互いに顔を見合わせる。それから数秒後、二人は同時に禰豆子を見た。
((禰豆子ぉおおおお!?))
「醜女のはずないだろう!よく見てみろこの顔立ちを!!町でも評判の美人だったぞ、禰豆子は!!」
余りの言い草に激怒した炭治郎が大声でまくしたてる。一方汐は、まるで汚らしいものを見るような眼で少年を見つめた。
「あんた・・・眼球腐ってるんじゃないの?それとも、脳みそに蛆虫でも湧いているの?」
炭治郎とは対照的に冷静に、しかし心の底から軽蔑しきった言葉を彼に浴びせた。しかし彼は二人の言葉など意にも解せず、淡々と歩き出した。
そんな彼に、炭治郎は大声でまくしたてながらも素直についていくのであった。