第153章 真実(後編)<弐>
「もし、もしもだ。俺が大きな傷を負って人の形をしなくなったら、俺は俺じゃなくなると思うか?」
炭治郎の問いに、汐は大きく首を横に振った。
「何言ってんの?そんなわけないじゃない。どんな姿になったって、炭治郎は炭治郎でしょ・・・?・・・あ」
汐はそう言った後、何かに気づいたように口元を手で押さえた。
「そうなんだ。例え人とは少し違う存在でも、汐が汐である事には何も変わりはないんだ。汐は俺達の大切な仲間だ。それだけは何があっても、絶対に変わったりはしないんだ」
炭治郎の言葉が汐に届いた瞬間。濁った汐の両目からぽろりと涙がこぼれた。
それは瞬く間にあふれ出し、頬を伝って落ちて行く。
「あたしは、ここに居ていいの・・・?皆の、あんたの傍に、いてもいいの?」
「当たり前だろう!!」
炭治郎の力強い声に、汐は大きく体を震わせた。
「ああっ・・・、うぅうっ・・・・!!」
汐はこらえきれずに嗚咽を漏らしながら、炭治郎に縋りついた。
激しく上下する汐の背中に、炭治郎は手を当てた。陽だまりのような温かい手が、汐の凍り付いた心を少しずつ解していく。
(ああ、そうだったんだ)
炭治郎に縋りついて泣きながら、汐はぼんやりと思った。