第153章 真実(後編)<弐>
「それは、ウタカタノ花が今までのワダツミの子の記憶を保持しているからだろう」
ワダツミの子は淡々と答えた。
「全てではないが、ある程度の事は記憶している。だが、それをいつでも思い出せるかと言ったらそうではない。現に今も、この事を汐はずっと思い出せずにいたからな。それより、話を戻すがいいか?」
その言葉に宇髄は何か言いたげな顔をしたが、口を閉じた。
「このままでは鬼を駆逐することは不可能だと認識したウタカタノ花は、ある結論にたどり着きました。それは鬼を殺せるワダツミの子を生み出すこと」
「!?」
「本来ワダツミの子には戦闘能力はなく、庇護が必要な存在でした。ですが、それでは鬼の脅威に立ち向かうことは出来ない。だからウタカタノ花は長い年月をかけて、戦闘能力のあるワダツミの子。即ち呼吸を使える身体を持つワダツミの子を完成させました」
それが、呼吸とウタカタを同時に扱える特異点。
――大海原汐。
「そんな、そんなのおかしいわ!!」
重苦しい空気を斬り裂く様に、蜜璃が声を張り上げた。