第153章 真実(後編)<弐>
「だって、だってしおちゃんは自分の意思で鬼殺隊に入ったのよ!大切な人を亡くし、愛する人を守るために、辛く悲しい道を自分自身で選んだのよ!ナントカの花なんて関係ないわ!!」
「甘露寺!あまね様の前だぞ!」
大声を上げる蜜璃を宇髄が窘めると、蜜璃は体を震わせながらワダツミの子を睨みつけていた。
その目には涙をいっぱい溜めて。
だがワダツミの子は、そんな蜜璃を嘲笑うかのように鼻を鳴らした。
「人間が一番力を発揮できる感情は何か、あなた方はご存じか?」
ワダツミの子の問いかけに、蜜璃は首を傾げた。
「人間は感情で強くも弱くもなる生き物。ウタカタノ花は長い年月を生きそれを学んだ。そして人間の力を最大限に引き出せる感情。それは――」
――殺意だ。
その言葉に全員の全身に鳥肌が立った。そう言い放ったワダツミの子は、まごうことなく人ならざる者であった。
「戦いに身を置くあなた方なら覚えがあるはずだ。怒りや憎悪、殺意などの感情は痛覚を鈍らせ、いつも以上の力を出せる」
「・・・否定はできねえな」
「だが殺意が力になることを学習しても、多くのワダツミの子はこの殺意に耐え切れずに自我が崩壊し、暴走した。だからこそ、殺意に耐え戦闘能力を持った大海原汐は、ワダツミの子の最高傑作と言えるだろう」
いや、それだけではない。とワダツミの子は更につづけた。