第152章 真実(後編)<壱>
「ごめん、ごめんな、汐・・・!」
炭治郎は歯を食いしばりながら、悔しさに顔を歪ませた。目から涙があふれ、頬を伝って流れ落ちて行く。
「お前が苦しんでいるのに、俺は何も気づかなかった。宇髄さんに目を離すなって言われていたのに、一人にさせてしまった。ごめん、ごめんな・・・!!」
汐を抱きしめながら必死に謝る炭治郎の声は、壊れかかった汐の心に微かに届いた。
(違う、違うの、炭治郎)
汐は、炭治郎の熱を微かに感じながら心の中でつぶやいた。
(あなたが悪いんじゃない。あなたがそんな顔をする必要はないの。でも、そんな顔をさせたのは、あたしのせいね)
結局迷惑をかけっぱなしだなあと、ぼんやり思っていると、突然すっと体の芯が冷たくなった。
そして浮かんだのは、「真実を話さなければならない」という一つの決意。
「相変わらず、君は優しいね」
不意に聞こえた声に、炭治郎は顔を上げた。
声は確かに汐の物だ。だが、炭治郎は大きな違和感を感じた。
汐の匂いが、いつものと違う。果実のような香りでも、優しい潮の香りでもない。
それどころか、人間とも鬼とも異なる匂いが汐からしていた。