第152章 真実(後編)<壱>
「何があったんだ!!汐!!」
尋常じゃない様子の汐に、炭治郎は汐の肩を掴んで激しく揺さぶった。
だが、汐の身体は起き上がりこぼしのように、力に従ってグラグラと動くだけだった。
「あたし、あたしね。人間じゃ、なかった」
「・・・え?」
「あたしは、あたし達は、存在しちゃいけなかった。生まれてきちゃいけなかった・・・!!」
うわああああああ!!!!
汐は叫びながら炭治郎を突き飛ばし、よろよろ後ずさった。
「いやだああああああああ!!!」
汐は両手で頭を抱えたまま、声を荒げて激しく狼狽した。
腕を振り、頭を大きく振り乱し、手当たり次第の物を払い落していく。
汐の叫び声と物が落ちる音が、部屋中に響き渡った。
そしてまとわりつく様な、絶望の匂いが炭治郎を包み込んだ。
「やめろ!やめてくれ!!もういいから!!」
炭治郎はその音をかき消すように叫んだ。
何があったのかは分からない。だが、決して弱音を吐かず、誰にも屈しない矜持を持つ汐がここまで心を乱してしまう何かがあったことは確かだ。
「汐!!」
炭治郎が叫ぶと同時に、汐の身体が一瞬だけ強張った。その隙を突く様に、炭治郎は汐の身体を掻き抱いた。
びくりと大きく身体を震わせる汐に構わず、炭治郎は強く強く抱きしめた。