第152章 真実(後編)<壱>
「何をやっているんだ!!汐!!」
よく目を凝らしてみれば、ぼやけた視界の中に見覚えのある顔が段々とはっきり映ってくる。
それが焦燥と怒りを"目"に宿した炭治郎だと理解するのに、少しだけ時間がかかった。
「お前っ、一体何を・・・!?」
炭治郎は汐の手を掴んだまま怒鳴りつけた。
広い部屋に、その声がこだまする。
「ねえ、炭治郎・・・」
だが、汐はそれには答えずに、俯いたまま、絞り出すように言った。
「鬼でも人でもない存在って、なんだとおもう?」
「えっ?」
汐から投げかけられた問いに、炭治郎は意味が分からず聞き返した。
その途端。
「あはっ、あははは・・・・」
汐は力なく笑いながら、ゆっくりと顔を上げた。
その瞬間、炭治郎の体中に鳥肌が立った。
汐の目が、一切の光を失っていた。
笑っているときは勿論の事。怒っている時や泣いている時でさえ、汐の目には光があった。
水面に反射する光のように、美しく輝いていた。
だが、今の汐にはそれが全くなく、濁ったガラス玉のような双眸だった。