第151章 真実(前編)<肆>
「マジ・・・かよ」
ワダツミの子が語った真実は、皆が想像するよりも遥かに信じがたいことだった。
「そんな・・・」
宇髄と蜜璃の顔は真っ青になり、あまねの表情は変わらないようにも見えるが、目は微かに揺れていた。
「とても信じがたいのは百も承知だ。だが"私"は嘘偽りは言っていない。いや、正確には"私達"と言った方がいいか」
ワダツミの子は少し自嘲気味に笑うと、あまねをじっと見据えた。
「その話が真実だとして、鬼舞辻無惨はこの事を把握していると思いますか?」
あまねの言葉に、ワダツミの子は小さく首を横に振った。
「いいえ。近しい存在とは言え、ワダツミの子は鬼ではない。仮に真実に気づいたとしても、今は太陽を克服した鬼、竈門禰豆子を狙うことに執着しているでしょう。それに今の"私"は、奴にとっては天敵同然。わざわざ危険を冒してまで、凶手を差し向けるとは思えません」
ワダツミの子はそう言って、薄ら笑いを浮かべた。
「では、あなた方は私達の脅威ではない、ということでよろしいでしょうか」
「はい。少なくとも今は、"私"は人間の敵ではありません」
「・・・そうですか」
はっきりと言い切るワダツミの子に、あまねは静かに答えた。
「貴重なお話をお伺いすることができ、誠にありがとうございました」
あまねはワダツミの子に向かって深々と頭を下げ、皆も同じように頭を下げた。
「それから宇髄天元様、甘露寺蜜璃様。本日はお忙しい仲御足労頂き、感謝申し上げます」
あまねの挨拶を最後に、その場はお開きになった。