第151章 真実(前編)<肆>
時間は戻り。
突如産屋敷邸に現れた者たちに、宇髄はこれ以上ない程驚きに目を見開いた。
そこには、恋柱である甘露寺蜜璃と、その継子である大海原汐がいたからだ。
「お前等、何でここに・・・?」
ここが産屋敷邸であるということも忘れ、宇髄は思わずそう言った。
だが蜜璃は険しい表情のまま何も言わず、汐と共にあまねに深々と頭を下げた。
「ご無理なお願いにもかかわらず、ご対応いただき恐れ入ります」
そう口にしたのは蜜璃、ではなく汐。その態度にあまねは勿論、蜜璃、宇髄も目を剥き凝視した。
「本来このような場所に"私"のような者はふさわしくないでしょうが、火急の報せゆえお許しいただきたく存じます」
いつもの汐からは考えられないような言葉が飛び出し、蜜璃は顔を青くし、宇髄も言葉を失った。
(汐・・・?いや違う。姿形は汐だが、目つきや雰囲気がまるで別人だ)
宇髄は一度、汐の雰囲気が変化したことがあったことを思い出した。いつもの汐らしからぬ、毅然とした厳かな雰囲気。
(まさか・・・、まさかこいつは・・・!)
「お前、まさか・・・ワダツミの子か?」
宇髄の口から、震える声が飛び出した。その言葉に、汐以外の全員の視線が彼へ向く。
「それはいったい、どういう・・・」
「その先は"私"が話そう」
そう言ったのは、いつもと雰囲気が全く違う汐の姿をした、ワダツミの子。
「全て思い出したんだ。"私"が、ワダツミの子と呼ばれるものが何か。そしてどうして、どのように生まれたのか」
そう前置きをすると、ワダツミの子は徐に語りだした。
自らの正体と、如何にして彼女たちは生まれたのか。
そのすべてを――。