第151章 真実(前編)<肆>
そして汐は、まとめた荷物を抱えながら空を見上げた。
「タユウ」
汐が静かに呼ぶと、どこからかソラノタユウがそっと足元に舞い降りてきた。
「悪いけれど頼める?すぐにみっちゃん、師範に伝えて欲しいことがあるの。それと、出来ればあの人に。お館様にも」
「!?」
タユウは驚いたように羽を広げながら、汐を見上げた。
「思い出したんだ。"私"の全ての事。そしてこれは、今すぐに伝えなければならない事なんだ。早く、急いで」
汐の鋭い声に、タユウは慌てたように蜜璃の元へと飛び立った。
それから炭治郎が向かったであろう、義勇の屋敷の方へ顔を向けると、汐は静かに目を閉じた。
(ごめん、炭治郎。また約束、破っちゃった)
汐は目を開くと、その道とは反対方向に足を進めた。
(あたしは、私は・・・。もう君の傍にはいられない)
張り裂けそうな痛みに耐えるように、その場から逃げるように、汐は全力で走った。