第151章 真実(前編)<肆>
「この事実を彼女は、大海原汐様はご存じなのですか?」
宇髄は身体を震わせながら、首を横に振った。
妻たちの手前、真実を受け入れるかどうかは汐自身が決める事とは言ったものの、このような悍ましく残酷な真実を告げることに、宇髄自身もためらっていた。
矛盾しているとは知りつつも、決断できないでいた。
汐が今の今までどのような想いで、どのような覚悟で戦ってきたか、宇髄は少なからず知っていた。
人として、愛する者を守ろうと歯を食いしばり、血反吐を吐きながらも前に進む汐の魂の輝きを、全て否定しかねない事実だったからだ。
再び居心地の悪い沈黙が続くと思われたその時。
一羽の鴉が音もなく、あまねの隣に降り立った。
鴉はあまねの耳もとで何かを告げると、あまねは驚いたように目を見開いた。
(なんだ・・・?)
鴉の声はあまりにも小さすぎて、流石の宇髄でも聞き取ることは出来なかった。
だが、あまねの反応を見るに、何かが起こったことは明らかだった。
「・・・わかりました」
あまねはそれだけを言うと、再び宇髄に向き合い口を開いた。
「宇髄天元様。誠に申し訳ございませんが、早急の報せが入りましたので・・・」
「はい。貴重なお時間を頂きまして、誠にありがとうございました」
「いえ、そうではなく。もう少々お待ちいただけますでしょうか」
あまねの言葉に、宇髄は面食らったように右目を見開いた。
使いの鴉が飛び立ち、それから数分の時がったころ。
「失礼いたします」
聞き覚えのある声がして、宇髄が顔を向けると、そこには見覚えのある人物が立っていた。
「お前は・・・」